「肺」について知ろう!肺と一番関係が深い季節とは?おすすめな食材は?
肺とは?
肺は胸の中で、左右一つずつあります。肺は一番高い位置にある内臓なので、「五臓六腑の蓋」または「華蓋(かがい)( ←華奢で、か弱い蓋という意味合い)と呼ばれています。また気管や喉を通じて外界に直接繋がっているので、肺は外の空気に非常に敏感で、暑さや寒さなどの影響を受けやすい臓腑になります。そこで肺は「か弱い臓」とも呼ばれています。
肺の主な働き
全身の気の管理・呼吸の管理・気とともに栄養物質や津液を全身に行き渡らせる働き(宣発(せんぱつ)と粛降(しゅくこう))などです。また水分代謝とも深い関係を持っています。詳しくは下記にまとめましたので、御覧ください♡
①呼吸をおこない、全身の気の管理
呼吸によって大気中のきれいな気を吸い込み、汚れ気を排出します。きれいな気は飲食物から吸収した栄養物質と結合し、「宗気(そうき)」となり、胸中にたまります。呼吸がしっかりとできていれば、全身の気が充実します。以下、様々な気の生成をまとめましたので、御覧ください!
- 宗気:上記でもさらっと説明いたしましたが、飲食物を消化して得られた「水穀の気」と、肺が取り入れた「清気」が合わさって作られる気
- 営気・衛気:飲食物を消化して得られた「水穀の精微(すいこくのせいび)(←エネルギーの総称)」が肺に送られ、「清気」と交わり、肺の作用を受けることで生まれる気
※他に「元気」という気がありますが、それは違う臓腑が作る気と結びつくので、割愛させていただきます♡
気の生成と関係するという肺の働きは、以下の表に簡単にわかりやすくまとめてみましたので、ご覧いただければと思います🙇♀
内臓の状態 | 外部の状態 | |
病んでいる状態 | 肺の気が弱って宗気の生成に影響し、不足する | ・呼吸が浅くなる ・声が低くなる ・声に力がない ・体に力がみなぎってないなど |
②清気を受け持つ
清気は、上部にある様々な気管に、エネルギーや影響を与えるものとされています。例えば、視覚・聴覚・嗅覚・発声など正常であるためには、清気は欠かせないものであると考えるのです。清気を受け持つという肺の働きは以下のようにまとめましたので、ご参考に♡
内部の状態 | 外部の状態 | |
正常な状態 | 肺は正常で清気は上部へ送られる | 視覚・聴覚・嗅覚・発声などは正常 |
病んでいる状態 | 肺の気は弱る。または邪気によって肺の働きが妨げられ、清気が上部へ送られない | ・めまい ・鼻づまり ・鼻が乾燥する ・耳鳴り ・耳の聞こえが悪いなど |
③上部や体表へ行き渡らせる作用、下や内部へ降ろす作用(宣発と粛降)
肺と言えばこの働き!ところで宣発と粛降って?🤔
大まかに説明いたしますと、この2つの作用が強調して、全身に津液や栄養物質を行き渡らせます。この宣発粛降作用が正常であれば、体表まで津液や栄養物質が到達しているので、肌には潤いや艶があります。風邪など身を守る「衛気(えき)」を体表まで到達させ、「発汗」させるのは「宣発」と「粛降」の共同作業によります。粛降作用が正常であれば、行きを深く腎まで吸い込むことができます。
これから、より詳しく説明しますので、辛抱強く読んでいただけたらと思います!笑
肺の機能の一番といってもいいと思うくらい重要な働きなので。
宣発(気を上へ、外へ動かす働き)
肺には「呼吸を受け持つ」働きがあります。そして中医学は「吸う→吐く」と連続する呼吸運動は全身の気を動かす原動力になっていると考えています。
呼吸はもちろん「吸う→吐く」で1セットですが、その中で、特に「吐く」に伴う気の動きや、その結果生まれる働きを「宣発」と呼んでいます。これは気を、上へ、外へ動かす働きです。
この働きの具体的な内容は、大きく以下の通りです。
- 体内の汚れた気を外へ排出する(皮膚や口から)
- 飲食物を消化して得られた「水穀の精微(エネルギーや栄養)」を、全身に特に体の表面である皮毛へと行き渡らせる
- バリアーの役割をする(衛気)を、体の表面に行き渡らせる
- 清気を、上部にある様々な器官へと送る
肺の宣発の働きは以下の通りです。
内部の状態 | 外部の状態 | |
病んでいる状態 | 宣発の働きが弱り、「水穀の精微」を体表へ送れない | ・風邪を引きやすくなる ・汗が多く出る ・皮膚がカサカサになるなど |
病んでいる状態 | 宣発の働きが弱り、衛気を体表へ送れない | ・体の表面が冷たくなる ・寒気がする ・風邪をひきやすくなる |
粛降(気を下へ、内へ動かす)
呼吸の中で、「吸う」ことに伴う気の動きや、その結果生まれる働きを「粛降」と呼びます。これは気を、主に下へ、内へ動かす働きです。
この働きの具体的な内容は、大きく4つにまとめることができます。
①清気(外の空気)を吸い込む。さらに清気を下(主に腎)へ送る
②気の上逆を抑える(例:深く息を吸うと、しゃっくりは止まる)
③飲食物を消化して得られた水穀の精微(エネルギーや栄養)を、下にある臓腑や器官へ送る
④体の上部の水を下(主に膀胱と腎)へ送ることで、水液の代謝を助ける
上記の4つの働きの結果として、さらに2つの働きを加えることができます。
・肺や気管を清潔に保ち、痰などの異物がたまらないようにする(気や水液を下へ送っているので、停滞して痰になったりしない)
・大腸の大便を下へ送る働きを助け、正常な排便を促す(肺の気が正常に下行することが、大腸の働きの支える)
内部の状態 | 外部の状態 | |
病んでいる状態 | 粛降の働きが弱り、気の上逆を抑えられない | ・咳 ・喘息など |
病んでいる状態 | 粛降の働きが弱り、上部の水を下へ送れない | ・顔がむくむ ・尿の量が減るなど |
病んでいる状態 | 粛降の働きが弱り、肺や気管に痰がたまる | ・咳と同時に痰ががからむ ・喘息のときに、咳と同時に痰が絡み、呼吸を妨げる |
宣発と粛降のまとめ♡
今までは「宣発」と「粛降」を分けて説明しましたが、ただしこの2つは、共同でたくさんの仕事をしています。そこで、宣発と粛降は、合わせて「宣降(せんこう)」とも呼ばれています。
肺の宣降とは、つまり呼吸によって生み出される気の動きです。そこでvには、まず「気を運行させる」という働きがあります。運行させているのは主に宗気や営気、そして衛気です。それぞれをまとめると、次のようになります。
宗気:肺の宣発によって上昇し、粛降によって下行する
営気:肺経に始まり、十二正経をめぐって肺経に戻る営気の流れは、肺の宣降に支えられている
衛気:肺の宣発によって体の体表に送られ、粛降によって胸や腹の内部に分散する
内部の状態 | 外部の状態 | |
病んでいる状態 | 宣降の働きが弱り、宗気が上下に動けず、胸中に停滞する | ・胸部の膨満感、閉塞感 ・呼吸がスムーズにできないなど |
宣降の機能が低下すると
- 汗が出にくい
- 汗が出すぎる
- 風邪をひきやすい
- 元気が出ない
- 肌が乾燥する
- 疲れやすいなど
肺×大腸
肺は気を降ろす作用によって便を下の方へ伝導させる働きを助け、排便をスムーズにします。
肺×鼻
肺は鼻と関係が深い/肺は声を受け持つ
あなの中で肺に対応するのは「鼻」です。鼻で呼吸をするとき、鼻は重要な気の通り道でもあります。つまり、肺は皮膚だけでなく鼻とも繋がっているのです。また外の邪気が肺に侵入するときも、肺は重要な入り口・通り道ともなります。
そして肺には「においを感じる」働きもあります。そこで肺に問題があると、鼻の呼吸は嗅覚に影響を与えると考えられました。
内部の状態 | 外部の状態 | |
正常な状態 | 肺は正常 | ・鼻の気の通りはよく、呼吸は正常 ・嗅覚も正常など |
病んでいる状態 | 肺の気が滞る | ・鼻がつまる ・鼻水が出る ・嗅覚が鈍るなど |
さて、肺と鼻の間には「のど」がありますね。そして喉の主な働きは「声を出すこと」です。声が正常に出されるためには、肺の呼吸に問題がなく、気が正常に喉を通らなくてはいけません。そこで中医学は、「肺は声を受け持つ」とも考えています。
肺×皮毛
肺は皮毛と関係が深い(「肺主皮毛/肺在体合皮毛」)
体の中で、肺に対応するのは「皮毛」です。本によっては、「肺在体合皮毛、其華在毛」(肺は皮と関係が深い。また肺の状態は毛に現れる)というように「皮」と「毛」を分けています。深く考えないで、こんな話もあるんだなあ程度で大丈夫です🙆多くの本では「肺は皮毛と関係が深い」としています。皮毛って何?と思う人も多いかと思いますが、「皮膚」のことです。
肺は皮毛を受け持つ
肺は宣発の働きを通じて、エネルギーや栄養を体の表面に行き渡らせます。皮毛がいつも温まり潤っているのは、このエネルギーや栄養をもらっているからです。また衛気は体の表面を多い、バリアーとして邪気の侵入を防ぎます。このように皮毛からみて「肺さんは、いつもお世話になってます」という関係を「肺主皮毛」といいます。つまり「内→外」「肺→皮毛」という関係です。
内部の状態 | 外部の状態 | |
正常な状態 | 肺の働きは正常 | ・皮膚はキメが細かく、色艶もよい ・毛にも光沢がある ・抵抗力があり、簡単に風邪をひかないなど |
病んでいる状態 | 肺の働きが弱る | ・皮毛は潤いや輝きを失う ・抵抗力が弱り、風邪を引きやすいなど |
肺は皮毛とリンクしている
皮毛はただ一方的に、肺の世話になっているわけではありません。対等に肩を並べて、共同作業をしているのです。それは何かというと、呼吸です。
呼吸は、肺だけがしている仕事ではありません。衛気の働きの元で、皮膚もまた呼吸をしています。呼吸は宣発・粛降という気の流れを生み出しますが、宣発という流れは、皮膚の呼吸がなければ完成しないのです。これを「皮膚にも肺気を宣発する働きがある」という人もいます。つまり呼吸は肺と皮膚の共同作業であり、その中で皮膚は、特に宣発と深く関係しているということです。
皮膚が上手に呼吸ができなくなると、肺の宣発が滞り、肺の働きに影響が出ます。このように肺と皮毛を、「外→内」「皮毛→肺」という視点からみた関係が「肺合皮毛」です。
肺×悲
肺は「憂い」や「悲しみ」と関係が深い(「肺在志為憂(悲)」)
感情の中で、肺に対応するのは「憂い」と「悲しみ」です。2つありますが、体に与える影響はどちらもほぼ同じだと中医学では考えます。憂いには「心配する」のほか、「気をふさぐ」「辛い」などの意味もあるので、確かに「悲しみ」に通じるニュアンスがありますね。
そして憂いや悲しみは、気を消耗させてしまうと考えられています。肺は気を受け持つ臓なので、気の力が弱るということは、肺も弱るということです。過度の「憂い」や「悲しみ」は、その人の気を弱め、肺の働きが低下します。
また反対に、肺が弱っているときに、気がふさいだり、悲しくなったりすると中医学では考えます。
肺に効く漢方薬は?
喉やくしゃみなど肺にまつわる症状はいくつかあります。秋口になると、乾いた咳が出やすくなり、痰が喉に絡んだりして、不快になります。そんなときは麦門冬湯をおすすめします♡喉を潤し、張り付くような痰を出しやすくしますよ♪
幼稚園に通っている娘たちが結構咳が出ていて、私も咳が出るようになりました。漢方薬は気がついたらすぐ飲むというのがポイント。早めの処置をおすすめします。
おすすめな食材は?
肺を潤す食材はいくつかありますが、基本的に「白」の食材を選びましょう!
例えば、豆腐、チーズ、白きくらげ、白砂糖、白米など。これは覚えておくだけで、本を見ないで食材を選ぶことができますね。
さらに、杏仁、蜂蜜なども効果は期待できると思います。
杏仁豆腐のレシピはこちら♡
参考文献
中医学ってなんだろう①人間のしくみ 小金井信宏
薬膳の基本と中医学1
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